最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)405号 判決
原判決の確定するところによれば、本件買収計画に対する訴願の裁決書はおそくも昭和二三年一一月二〇日に上告人に送付せられ、その後同二四年一月二九日に本件買収令書が上告人に交付せられたというのであつて、買収処分の効力は買収令書の交付のときに生ずるのであるから、たとえ、右買収令書の日附若しくは同令書に記載された買収の時期が訴願裁決の日以前であつたとしても、それがために買収処分の効力に消長を来すものということはできない。論旨は理由がない。
同第二点について。
自作農創設特別措置法五条四号によれば、都市計画法一二条一項の規定による土地区画整理を施行する土地の境域内にある農地で、都道府県知事の指定する区域内にあるものは、同法三条の規定による買収をしないとするのであつて、右のごとき土地の境域内にある農地でも、都道府県知事の指定のないものは、同法五条四号の規定によつて同法三条による買収を禁ぜられているものでないことは明らかである。原判決の同条同号に関する解釈は正当であつて、論旨は理由がない。
よつて民訴四〇一条同九五条八九条に従い全裁判官一致の意見を以て主文のとおり判決する。
(裁判官 霜山精一 栗山茂 小谷勝重 藤田八郎 谷村唯一郎)
上告代理人林昌司の上告理由
第一点 原判決は理由に齟齬がある。
原判決理由の前段に於て「本件買収処分の効力は、控訴人(上告人)に該令書が到達した昭和二十四年一月二十九日に生じたものと云うべきであるから、買収令書の作成日附が訴願裁決前である昭和二十三年七月二日であつても買収処分の効力に影響を及ぼすものではない」と判示している。
勿論、買収処分の効力が該令書の到達によつて初めて発生することは異論がない。
但し此の理論を一貫するならば、該買収令書に記載されている買収の時期の記載は無意味化することとなる。
それでよいのであれば問題はないのである。
原判決理由後段に於て「本件買収令書に記載された買収の時期がその訴願裁決前である昭和二十三年七月二日に遡つて定められても違法でないことは勿論である」と判示しているが、実際問題としては、本件の如く訴願裁決前の昭和二十三年七月二日が買収の時期と明示されている以上、買収処分の効力は買収時期、即ち前記七月二日に遡及して其の時期に買収があつたことになり、一切の効力は其の時に及ぶのであり、従つて買収価格其の他についても其の時期を基準として算定されているのであるから、原判決が単に形式理論に捉われての判示理由は審理不尽の誹を免れないし、従つて理由不備、理由の齟齬があると謂わざるを得ない。
而して「訴願成立たず」又は「訴願理由あり」との何れに決したかは、その訴願の裁決を俟つて始めて判る事柄であつて、訴願裁決前の日附での買収令書の作成、買収時期同前ということは訴願審議を無視した奇怪なやり方と謂うべく、国民一般の納得し難きものと謂わねばならぬ。
此の点に関し第一審判決判示理由中に「真に奇異なことである」と判示している。
第二点 原判決は法令に違反している。
上告人の「本件土地は自作農創設特別措置法第五条第一項第四号に該当するもので買収出来ない」との主張に対し、原判決は判示理由末項に於て「都市計画法第十二条第一項の規定による土地区劃整理を施行する土地の境域内にある農地は、都道府県知事の指定する区域内にあるものについてこれを買収しない旨定めたものであつて、該指定がない限り買収の対象から除外されない」と判示しているが、之れは明らかに自作農創設特別措置法第五条第一項第四号の規定する読み方及び解釈を誤つたもので、同四号に所謂「都市計画法第十二条第一項の規定による土地区劃整理を施行する土地」については地方長官の指定は必要としない。
地方長官の指定を俟つて買収から除外されるものは、同号の又は以下の「同法第十六条第一項の施設に必要な土地の境域内にある農地」である。
本件土地は証拠によつて明らかな如く都市計画法第十二条第一項の規定による土地区劃整理を施行する土地であるから、地方長官の指定を必要としないにも拘らず前叙の如く自作農創設特別措置法第五条第一項第四号「又は以下」と同様本件土地についても地方長官の指定を必要とすると断じえなきが故に上告人の原審主張を排斥したのは法令の解釈を誤り、不当に法令を適用したもので結局法令に違反したる判決と謂わざるを得ない。
仍て原判決は破毀を免れない。